【原発】『菅による東電撤退阻止』というデマ

以下の菅批判をするメディア批判のエントリに多数のブコメがついていた。

産経新聞による首相の責任捏造・福島第一原発事故 - 誰かの妄想・はてな版

しかしこのエントリにある『東電撤退』の項は間違っている。

東電が全員撤退すると官邸が誤解したのは、清水社長が寺坂保安院長に電話をかけた際に必要な人員を残すことを明示しなかったためですが、産経新聞はこの部分を無視して「菅氏が(略)東電本店に怒鳴りこんだのは、この指示を勘違いした公算が大きい。」と勝手な憶測を述べています。

報告書に明記してある内容を無視して憶測を記事にするというのは、さすがに不誠実すぎますが、産経新聞は「どうせ報告書を直接確認する奴はいない」と読者を舐めているのか、それとも、産経記者自身が報告書をろくに読んでいないか、とにかくメディアとしてひどい有様です。

報告書を読めば分かるが

東電が全員撤退すると官邸が誤解したのは、清水社長が寺坂保安院長に電話をかけた際に必要な人員を残すことを明示しなかったため

という部分は正しくない。

保安院から東電全面撤退を聞いて驚いた関係閣僚が官邸に清水社長を呼び出し

清水社長はそこで明確に否定したと報告書には書いてある。

つまり、寺沢保安院長と清水社長の間で情報伝達にミスがあったが

政府首脳部が官邸で清水社長から直接撤退否定を聞いた為に認識の間違いは修正された『かのように』報告書には書かれてある。

『かのように』

実はこの報告書、清水の否定後も政府内で東電撤退に対する認識を改められること無く菅の東電怒鳴りこみが起こったことに触れていないのである。


◆『菅による東電撤退阻止』を否定した報告書
報告書の当該部分を引用すると

その報告を受けた菅総理は、同日4 時頃、清水社長を官邸5 階に呼び、関係閣
僚、班目委員長、伊藤危機管理監、安井保安院付らが同席する中で、同社長に対
し、東京電力福島第一原発から撤退するつもりであるのか尋ねた。清水社長は、
「撤退」という言葉を聞き、菅総理が、発電所から全員が完全に引き上げてプラ
ント制御も放棄するのかという意味で尋ねているものと理解したが、その意味で
の撤退は考えていなかったので、「そんなことは考えていません。」と明確に否
定した。これを受け、菅総理は、政府と東京電力との間の情報共有の迅速化を図
るため、政府と東京電力が一体となった対策本部を作って福島第一原発の事故の
収束に向けた対応を進めていきたい旨の提案を行った。清水社長も、官邸との連
絡体制を十分に図らなければならないと考えていたため、菅総理の提案を了解し
た。
同日 5 時 30 分頃、菅総理らは、東京電力本店 2 階に設置された本店対策本部
を訪れ、本店対策本部にいた勝俣恒久東京電力会長、清水社長、武藤副社長その
他の東京電力役員及び社員らに対し、自らを本部長とし、海江田経産大臣と清水
社長を副本部長とする、福島原子力発電所事故対策統合本部(以下「統合本部」
という。)の立ち上げを宣言した。

報告書は清水の否定に言及する一方で『菅による東電怒鳴りこみ』に全く触れていない。

つまりこの報告書は『菅による東電撤退阻止』など存在していなかったと言っているのだ。

この『東電撤退阻止』のポイントは『清水が官邸で全面撤退を否定したかどうか』が最大のポイントだった。

菅や枝野はインタビューで『清水は全面撤退するような言い方だった』と主張し

東電側はそれを真っ向から否定していた。

そして今回報告書は東電側の主張を支持した。

(まあ、そもそも菅直人自身も国会で『清水社長は別に撤退というわけではないと述べた』と答弁していたのだが)

この報告書により、菅直人が清水社長が否定したにもかかわらず東電に乗り込み怒鳴りまくり

我々が東電の撤退を阻止した、と吹聴していたことが確定した。

報告書はこの誤った判断と行動をズバリ指摘していないけれども

まあ政治的配慮なのだろう。



◆総括されるべき愚行とデマ

おそらく政治的配慮で『東電怒鳴りこみ』に直接触れず

清水社長の明確な否定を認めることで菅の行動の誤りを示唆した事故調査検証委員会の中間報告書だが

この『東電乗り込み』と言う愚行と『東電撤退阻止』というデマはきちんと総括されるべきである。

菅による東電乗り込みという愚行の実態は

政府首脳が関係組織と意思疎通に失敗し、修正する機会がありながら間違った認識のまま思い切った行動に出たという話だ。

政府の危機管理として非常に危うい事態である。

吉田所長の美談でおさめられがちな海水注入の件もそうだが

この菅による東電怒鳴りこみもまた厳しく総括されなければならない。

関係組織とのコミュニケーション不足や

誤った認識のまま行動した政府首脳など

将来の危機管理に非常に大きな教訓となるのは間違いないからだ。

菅は悪くない

産経が悪い

そのような愚かな考えにとらわれ現実から目を反らすのは全く愚かなことである。