『東電全面撤退阻止』のデマを広めた朝日新聞 その2

続きは2へとか書きながら忙しかったので今頃更新。




福島原発事故は3.11前の規制当局と事業者の癒着という問題と3.11直後の事故対応の問題と大きく二つに分けられる。

そして朝日新聞は事故対応検証についてかなり力を入れ、それに関する出版物も色々出していた。

それらには共通して「原発事故対応の中で官邸による東電全面撤退阻止が大きなターニングポイントになった」ということが強調されていた。

しかし、政府事故調に「東電全面撤退阻止」が単なる勘違いとほのめかされ、そして6月9日に行われた国会事故調の論点整理で「東電撤退阻止」が官邸側の勘違いと断定され、朝日新聞が作り上げてきた「原発事故検証ストーリー」が大きく崩れる事態となった。

ここから朝日新聞系の人間達はあわて始める。


■動揺する朝日新聞系の人間達

まず論点整理から3日後に朝日新聞は「社説」で国会事故調を名指しで非難した。

国会事故調―何を解明したいのか


 福島第一原発事故をめぐる国会の調査委員会黒川清委員長)が、ひととおりの参考人招致を終えた。今月末までに最終報告書をまとめる。

 だが、9日に示された論点整理は、判断の根拠がはっきりせず、説得力に欠ける。

 この間おこなわれた政治家や東京電力の首脳陣に対する質疑も、原子力行政の構造的な問題を解き明かすような切り口に乏しかった。

 国会事故調は、何を解明したいのか。このままでは、不十分な報告書にしかならないのではないかと心配になる。

 今回の論点整理は、事故直後の官邸の対応に焦点をあてている。この中で、もっとも違和感が強いのは東電の「全員撤退」をめぐる見解だ。

 事故調は「東電が全員撤退を決定した形跡は見あたらない」と結論づけている。

 これは、菅首相(当時)をはじめとする官邸側の数々の証言と真っ向から対立する。

 質疑でも、官房長官だった枝野氏が清水正孝社長(同)との電話のやりとりを紹介し、全面撤退と認識したことを証言したのに対し、清水氏は「記憶にない」の一点張りだった。

 ところが、黒川委員長は清水氏に対して「肝心なことを忘れている」と述べただけで、記者会見では「官邸と東電のコミュニケーション不足の問題」と分析した。官邸側の言い分はほとんど無視された。

 これで納得できるだろうか。問題は東電本社に事故対処への強い意志があったかどうかだ。それによって、その後の菅氏の行動への評価も分かれる。

 官邸側に誤解があって、「事故対応に過剰な介入をした」と事故調が論ずるなら、そこに至る根拠や調査で明らかになっている事実を、もっと明確に説明すべきだ。

 そもそも、事故調の目的は何か。責任追及も大事だが、最大の主眼は、二度とこうした事故を起こさない教訓をどのようにつかみとるかにある。

 その意味で、事故以前の問題への踏み込みも物足りない。

 今日の原子力行政をつくってきた自民党への調査をおこなっていないのは、どういうわけだろう。政府の事故調では官邸対応の分析に限界があると意識するあまり、そこに目を向けすぎてはいないだろうか。

 憲政史上初めて国会に設けられ、国政調査権の行使まで認められた独立委員会だ。

 国民が期待しているのは、国内外からの評価と歴史の検証に堪えうる報告書である。


ちなみに論点整理の段階でここまで敏感に反応したメディアは産経と朝日だけである。

東電全面撤退阻止」が否定されたことで朝日新聞が非常に動揺したことがこの攻撃的な社説から伺える。

また例のWEBRONZAでも、まず6月15日に東電撤退阻止から統合本部設置にいたる菅直人のインタビューを三回にわたって掲載した。

【菅直人氏インタビュー(上)】 東電は全面的に撤退するという話だった - WEBRONZA+科学・環境 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)
【菅直人氏インタビュー(中)】 原発から逃げたら、日本は国として成り立たないと思った - WEBRONZA+科学・環境 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)
【菅直人氏インタビュー(下)】 原発の確実な安全性確保は不可能だ - WEBRONZA+科学・環境 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)

あまりに露骨な擁護である。

また編集委員、論説委員達も必死に反論を掲載していた。

小此木潔
東電首脳部、やはり実質「全員退避」を考えた? - WEBRONZA+経済・雇用 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)

竹内敬二
原発事故調。「事故がどう進んだか」を突き詰めなくていいのか。 - WEBRONZA+科学・環境 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)

大鹿靖明
お粗末きわまりない国会事故調 - WEBRONZA+経済・雇用 - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)

これらの記事からも朝日新聞系の人間達が「東電全面撤退阻止」の否定に激しく動揺したかが分かるだろう。

しかし、最も「東電全面撤退阻止」否定に朝日新聞が動揺したのかが明白になったのは国会事故調最終報告書提出後の記者会見の場であった。


記者会見に大挙して押し寄せた朝日新聞の記者達

国会事故調の最終報告に関する記者会見の動画である。

かなり異様な光景が見られるので時間がある人は見といてもいいと思う。

最終報告の記者会見ということもあり、国内外の様々な媒体から多くの(たぶん百人以上)記者がきていた。

にもかかわらず、指される記者の多くが「朝日新聞」と名乗ったのだ。

一体何人朝日新聞から来ているんだよ、という話である。

しかも皆執拗に東電撤退について繰り返し質問をしたのだ。

朝日新聞から「東電全面撤退」についての事前質問が出されており、記者からの質問が始まる前に野村委員が答えていたにもかかわらず。

あまりに同じ質問ばかり繰り返されるので最後は進行役の広報の人が少し怒ってしまったほどである(笑)。


朝日新聞の死

国会事故調論点整理の「東電全面撤退阻止」否定に驚きあわて、拳を振り上げた朝日新聞だったが、事故調の最終報告書は事故以前の規制当局と事業者の癒着にも切り込んだバランスの取れたものだった。

翌日さっそく毎日新聞東京新聞北海道新聞など反原発系メディアは東電全面撤退阻止は勘違いということをさらりと触れながら、事故以前の原発を巡る環境を非難した国会事故調の最終報告書を評価した。

しかし、朝日新聞は国会事故調に触れなかった。

反原発系メディアの中でも突出して「東電全面撤退阻止」を強調していた朝日新聞は、この国会事故調の最終報告書を社説でどう評価するのだろうか、自分は非常に楽しみにして待った。

その次の日、朝日新聞は社説で国会事故調の最終報告書に触れた。

それがこれである。

国会事故調―全原発見直しに生かせ

 東京電力福島第一原発の事故は「人災」である。国会の事故調査委員会黒川清委員長)が、そう結論づけた。

 根本的な原因が政界・官僚・事業者が一体となった原発推進構造と責任感の欠如にあるという認識は、私たちも同じだ。

 最終報告書での問題提起を、原発政策の抜本的な見直しに反映させなければならない。

 調査委員会による公開での参考人質疑や論点整理の段階では、詰めの甘さや判断根拠の薄弱さが懸念されたが、640ページに及ぶ報告書は、事故の前と後とを丁寧に追跡・分析した内容に仕上がった。

 物足りない部分はある。使用済み核燃料処理の問題や、電力会社の株主・債権者の役割といった点は対象外とされた。

 何より、国政調査権を有しながら、自民党政権時代にさかのぼった政治の関与や介入についての検証に踏み込まなかったのは残念だ。

 それでも、生かすべき指摘は多い。とりわけ注目したいのは3・11以前の電力会社と規制当局の関係だ。

 電力会社が安全性より原発稼働率や訴訟リスクの回避を優先し、耐震基準の改定や過酷事故対策といった規制強化から、いかに逃れようとしたか。

 国民の安全確保にもっとも留意すべき原子力安全・保安院原子力安全委員会が、どのように電力会社に取り込まれていったか。それらが、具体的に描かれている。

 報告書は「関係者に共通するのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心」と批判し、東電に対しては「事業者としての資格があるのか」と疑問を突きつけた。国民共有の思いだろう。

 問題は、こうしたなれ合いの構図が他の電力会社や原発にも共通するのではないか、という点だ。特に報告書が懸念するのは耐震補強の不備である。

 報告書は、福島事故で津波の前に地震によって機器が損傷した可能性を「否定できない」と明記した。再稼働に向けて、政府が主に津波を念頭に進めてきた安全対策は、肝心のところが抜け落ちていないか。全原発の調査にとりかかるべきだ。

 せっかくの報告書だが、今後の活用について法律上の規定がない。このままだと「反省して終わり」になりかねない。

 憲政史上、初めて国会が独自に設けた調査委員会の成果である。政争の具にすることなく、原子力行政や原子力事業者の監視に反映させる義務を、すべての国会議員が負っている。

はい、完全スルーである(爆笑)。

あれだけこだわってたくせに撤退のての字も出てこなくて笑ってしまった。

これこそ「全面撤退」である(笑)。

まあ、菅内閣の下で設置された政府事故調の最終報告書でも「東電全面撤退阻止」は勘違い、と書かれるようだし、無かったことにして全力で逃亡するしか朝日新聞に道は無いだろうとも思える。

http://mainichi.jp/select/news/20120626k0000m010138000c.html

東京電力福島第1原発事故直後、菅直人前首相らが東電から原発からの「全員撤退」を伝えられたと主張している問題で、政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)は7月23日に公表される最終報告書で、東電は撤退を検討せず菅氏らの誤解と結論づける方針を固めたことが、関係者への取材で分かった。

これで「東電全面撤退阻止」の評価は定まったといって良いだろう。


さあ、決着は殆どついたが朝日新聞はこの落とし前をどうつけるのだろうか。

確かに今回の原発事故において津波対策などを怠った東京電力は厳しく責められるべき対象だろう。

しかし世論の空気に流されたりそれを利用する権力者に忖度してメディアがデマを拡散させることは絶対に避けるべきことである。