なぜ左派は負け続けるのか

なぜ日本の左派はこんなに弱いのか?ネトウヨが歴史を振返りながら考察するブログ

【政治】日本の左派が自民党に絶対勝てない理由

自民党が政権に復帰し政治が中長期にわたって安定期に入ったこともあり政局を観察するこのブログもフェードアウトしようかなと思ったのだが


リベラルが“保守反動”になった理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tachibanaakira/20130902-00027767/


を読んで自分の中のウヨサヨ論熱が刺激されてしまった。

まあ折角気力も湧いたことだし、日本政治の根幹にある『左派が自民党に絶対勝てない構造』というものを考えてこのブログに一旦一区切り付けたいと思う。



■自己完結する自民党

冷戦時代に続いた事実上の自民党一党独裁時代において自民党は党内の派閥争いと言う形で擬似的な政権交代を行ってきた。それを可能にしたのは自民党という政党が党外に批判勢力を必要としない、党内だけでバランスを保つことが出来る自己完結性を持っていたからだ。

しかし同時にこれは日本政治が健全な野党を必要としなくなったことも意味した。

冷戦が終わり、小選挙区制度を導入することで日本政治はこの状況を変えようとしたが、結果は自民党が自己完結性を維持したままスケールダウンするだけに終わった。

自己完結する自民党に野党が対峙することの難しさは、例えば『アベノミクス』からも見ることが出来る。


民主、反アベノミクス調査会を設置 経済政策とりまとめ
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS02030_S3A900C1PP8000/


アベノミクスは3本の矢という形で金融緩和派、財政出動派、構造改革派をまとめあげているが、これに加えて自民党内では財政再建派(緊縮財政派)が幅を利かせている。

つまりここでも自民党は主要な経済政策を網羅し自己完結しているのである。

これに対抗する野党は難しい立場に置かれる。野党は与党との違いを打ち出し存在感を示さなければならないが、自民党は現実的な政策の殆どを内包しているために野党は違いを示すことが難しい。

しかし違いを示すことが難しいからといって自民党の政策に賛成してしまうと、その政党は野党としてみなされなくなり、最悪自民党の一つの派閥のような扱いを世論やマスコミからされることになる。

自民党の自己完結性は過剰な包括を生み出すのである。

これから逃れるには『反アベノミクス』や『反自民』のように全てを否定するしかないが、現実的な政策をほぼ独占する自民党を否定してしまうと仮に政権交代を果たしても結局は自分たちの首を絞めることしかならないというのが民主党政権が残した教訓である。

中国の台頭や1000兆円を超える国の債務といった強力な政策拘束要因が増え続け政策の幅が狭まる一方で自民党の現実的政策を独占する力は強まっている。

自己完結する自民党の過剰な包括に怯えながら、政権交代も諦められずなんでも反対に戻りたくない野党は立つ場所が見当たらなくて呆然自失としているのが日本政治の現状である。

この野党を苦しめる自民党の自己完結性は一体何によって支えられているのだろうか。90年代の政治改革では中選挙区制度こそが自民党内での擬似政権交代と自己完結を生み出した元凶とみなし、小選挙区を導入すれば自民党は自然と瓦解し政権担当能力をもつ二つの政党に別れると考えたが、結局はそうならなかった。

自民党の自己完結性を支えたのは中選挙区制度ではなかったということだ。

では何が自民党の鵺のようなあの性質を支えているのだろうか。

その答えは憲法9条である。


■自民党を護る憲法9条

自民党の歴史を遡れば1955年の保守合同にたどり着く。

それまで(ざっくり分けると)親米軽武装路線の吉田派と自主独立路線の反吉田派で激しく争っていた保守勢力だったが、社会党再統一に危機感を抱き保守勢力結集へと動き出した。その際に行われた政策のすり合わせでは当然憲法改正の取り扱いが最大の問題となったが、憲法改正を強く訴える反吉田派の日本民主党の主張を吉田派の自由党が受け入れることで保守合同が成立し自由民主党が生まれた。

そして吉田派と反吉田派という異なる二つの勢力が反社会党・憲法改正を共通の目標とし合体したことで自民党という政党は採れる政策の幅が一気に広がり自己完結性を身につけた。ただ冷戦期には反革新や急拡大する富の分配が自民党の主な目標となり憲法改正は脇に置かれた。

しかし1990年前後に冷戦もバブルも崩壊し、中選挙区制度も小選挙区制度に変わることになり戦後の自民党を支え続けてきた柱が次々と倒れていった。本当ならここで親米軽武装のグループと自主独立のグループに自民党は分かれるはずだったのだろうが、最後に残った憲法改正という柱が自民党の分裂を防いだ。

反共という共通の敵がいなくなり米国にフリーライド出来なくなったことで親米軽武装路線の吉田派系も日米同盟深化の為に憲法改正が必要になっていたのである。そして2000年代に入り中国の台頭とその脅威がはっきりと見えてきたことで憲法改正は自民党の唯一で最大の共通目標となっていった。

党内に抱える矛盾を分裂せずに処理するためには共通する最終目標が無くてはならない。それは民由合併を果たした民主党を見れば分かりやすい。『政権交代』という目標によって民主党は党内や小沢自由党との矛盾を抑えこむことができた。目標を果たした後に一気に矛盾が噴出し崩壊してしまったが。

それは自民党も同じなのである。冷戦が終わり経済も長期停滞し二度も下野したにもかかわらず、自民党は相変わらず自己完結性を維持し続けている。それは憲法改正、特に9条改正が民主党にとっての『政権交代』と同じように自民党の最終目標として機能しているからである。

その意味で憲法9条は自民党を護っているといえる。



さて初めに書いた、日本政治の根幹にある『左派が自民党に絶対勝てない構造』がどういうものであるかは、もうだいたい分かるだろう。

憲法は自民党を護っている。

そして日本の左派はその憲法を護っている。

憲法が改正されない限り自民党の自己完結性は維持され、左派は護憲という形でそれをサポートしている。

その意味で左派は自民党に絶対『勝てない』。

左派の壊滅と憲法改正によって自民党は初めて負ける。

党の目的を果たし民主党のように瓦解していくのだ。

左派の徹底的な壊滅が自民党の自己完結性を終わらせる事ができる―

皮肉な話だが日本の政治にはそういう構造がある。